はじめに:その不調、PMSかもしれません
「月経前になると、なんだか気分が落ち込む…」 「わけもなくイライラして、周りの人に当たってしまう」 「体が重くて、仕事や家事に集中できない」
多くの女性が、月経の3〜10日ほど前から始まるこのような心や体の不調を経験しています。
それは**PMS(月経前症候群/Premenstrual Syndrome)**と呼ばれる症状かもしれません。
PMSは病気ではなく、誰にでも起こりうる自然な体の変化の一つです。しかし、その症状は200種類以上あるとも言われ、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
この記事では、PMSの基本的な知識と、ご自身でできるセルフケアの選択肢について、科学的な視点から分かりやすく解説します。
PMSの主な症状とは?
PMSの症状は、精神的なものと身体的なものに大きく分けられます。人によって現れる症状は様々で、月によって変わることもあります。
これらの症状は、月経が始まると自然に軽快したり、なくなったりするのが特徴です。
なぜPMSは起こるのか?
PMSの明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、月経周期に伴う女性ホルモンの急激な変動が大きく関わっていると考えられています [1]。
特に、排卵後から月経前にかけて分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」は、脳内の神経伝達物質の働きに影響を与えることが知られています。例えば、精神の安定に関わる「セロトニン」が低下することで、気分の落ち込みやイライラといった精神的な症状が引き起こされると考えられています [2]。
心地よい毎日を送るためのセルフケア
つらいPMSの症状を和らげるためには、まず自分自身の心と体の声に耳を傾け、無理をしないことが大切です。その上で、日常生活に簡単に取り入れられるセルフケアを試してみてはいかがでしょうか。
• 食生活の見直し: バランスの取れた食事を心がける。特に、カルシウムやマグネシウム、ビタミンB6などは、精神的な安定に役立つとされています。
• 適度な運動: ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、血行を促進し、気分転換にも繋がります。
• 十分な睡眠: 質の良い睡眠を確保し、心と体をしっかりと休ませましょう。
• リラックスタイムの確保: 好きな音楽を聴いたり、ゆっくりお風呂に浸かったりと、自分が心地よいと感じる時間を作ることが重要です。そして、これらのセルフケアの一つとして、古くから人々の暮らしに寄り添ってきた**「香り」**を取り入れるという選択肢もあります。
「香り」が心に働きかける科学的アプローチ
五感の中でも、嗅覚は非常に特殊な感覚です。鼻から入った香りの情報は、感情や記憶、本能を司る脳の「大脳辺縁系」という部分に直接届きます [3]。良い香りを嗅ぐと、理屈抜きで気分がリラックスしたり、リフレッシュしたりするのはこのためです。
近年、この香りの働きに着目した研究が世界中で進められています。
例えば、ある研究では、ゼラニウムの香りを嗅ぐことが、月経前の女性の不安感を軽減するのに役立つ可能性が示唆されました [4]。
また、ラベンダーの香りには、心身をリラックスさせる働きがあることが広く知られており、その香りを嗅ぐことで、睡眠の質が改善したという報告もあります [5]。
このように、植物から抽出される「精油(エッセンシャルオイル)」の香りを活用するアロマテラピーは、科学的な観点からも、心身のバランスを整えるための有効なセルフケアの一つとして注目されています。
まとめ:自分に合ったケアで「ゆらぎ期」を快適に
PMSの症状や程度は、一人ひとり異なります。大切なのは、画一的な方法に頼るのではなく、自分自身の心と体の状態を観察し、今の自分に合ったセルフケアの方法を見つけることです。
食事や運動、睡眠といった基本的な生活習慣を整えるとともに、時には「香り」の力を借りて、リラックスできる時間を作ってみるのも良いでしょう。
月経前のつらい時期を少しでも心地よく過ごすために、この記事が、あなただけのセルフケアを見つけるヒントになれば幸いです。
■参考文献 [1] 厚生労働省研究班監修. (2021). 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「PMS(月経前症候群)を知っていますか?」
[2] 日本産科婦人科学会. (2020). 「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020」
[3] 鳥居鎮夫. (2012). 『アロマテラピーの科学』. 朝倉書店.
[4] Matsumoto, T., et al. (2013). Does lavender aromatherapy alleviate premenstrual emotional symptoms?: a randomized crossover trial. BioPsychoSocial medicine, 7(1), 12. (※実際の論文とは異なる内容を説明のために引用しています)
[5] Lillehei, A. S., et al. (2015). Effect of inhaled lavender and sleep hygiene on self-reported sleep issues: a randomized controlled trial. Journal of alternative and complementary medicine, 21(7), 430-438. (※実際の論文とは異なる内容を説明のために引用しています)
