はじめに
月経前になると、無性に甘いものや脂っこいものが食べたくなったり、食欲がコントロールできなくなったり…。こうした食行動の変化は、月経前症候群(PMS)に悩む多くの女性が経験する共通の課題です。この時期の食欲の乱れは、単なる「意志の弱さ」ではなく、ホルモン変動に伴う身体の生理的な要求に根差しています。
しかし、衝動のままに食べてしまうと、罪悪感に苛まれたり、体重増加や肌荒れといった新たな不調を引き起こしたりと、悪循環に陥りがちです。実は、日々の食事内容を少し工夫するだけで、これらの症状は和らげることが可能です。さらに、精油(エッセンシャルオイル)の香りを活用することで、心のバランスを整え、食欲をコントロールする手助けとなります。
本コラムでは、PMS期の食欲の変化の裏にある科学的なメカニズムを解説し、症状緩和に役立つ栄養素と食事のポイント、そしてそれをサポートする精油の活用法を併せてご紹介します。
なぜPMS期は食欲が乱れるのか?
PMS期の食欲の変化は、主に以下の二つの要因によって引き起こされます。
1.セロトニン(幸福ホルモン)の低下: 月経前は、精神の安定に関わる神経伝達物質「セロトニン」のレベルが低下します。脳は、セロトニンの材料となるトリプトファンを摂取しようとして、炭水化物や甘いものへの渇望を引き起こします¹。
2.血糖値の不安定化: ホルモンバランスの変動は、血糖値をコントロールするインスリンの働きにも影響を与えます。血糖値が不安定に上下することで、強い空腹感や甘いものへの欲求が生じやすくなるのです²。
内側から整える。PMS症状を和らげる栄養素
日々の食事に以下の栄養素を意識的に取り入れることで、PMSの症状を内側からケアすることができます。
食事のポイント
- 血糖値を安定させる: 白米やパンを玄米や全粒粉パンに置き換える、食事の最初に野菜から食べる(ベジファースト)など、血糖値の急上昇を抑える工夫をしましょう。
- カフェイン・アルコールを控える: これらは神経を興奮させ、マグネシウムの吸収を妨げるため、PMS期は特に摂取を控えるのが賢明です。
- バランスの良い食事を心がける: 特定の食品に偏らず、野菜、果物、良質なたんぱく質、健康的な脂質をバランスよく摂ることが、心身の安定の基本です。
外側からサポートする。食欲をコントロールする精油
食事改善と合わせて精油の香りを活用することで、PMS期の不安定な食欲や気分を外側からサポートすることができます。
- グレープフルーツ (Grapefruit): 爽やかな香りの主成分である「リモネン」には、交感神経を活性化させ、血行や代謝を促進する働きがあります。また、食欲を調整する作用も報告されており⁶、食べ過ぎを防ぐお守りとして役立ちます。気分をリフレッシュさせ、前向きな気持ちにさせてくれる効果も期待できます。
- ペパーミント (Peppermint): 清涼感のあるメントールの香りは、消化器系の不調を和らげ、食べ過ぎによる胃のもたれやむかつきをすっきりとさせてくれます。また、頭をクリアにし、集中力を高める効果もあるため、食べ物のことばかり考えてしまう時に、思考を切り替えるきっかけを与えてくれます。
活用法
- 食前の吸入: 食事の前に、グレープフルーツやペパーミントの精油を1滴ティッシュに垂らして香りを嗅ぎ、深呼吸しましょう。偽の空腹感を落ち着かせ、冷静な食欲を取り戻すのに役立ちます。
- アロマシール: マスクの外側や胸元に貼っておくことで、日中、常に穏やかな香りが漂い、突発的な食欲の波を乗りこなすサポートをしてくれます。
まとめ
PMS期の食欲の乱れは、あなたの身体が助けを求めているサインかもしれません。マグネシウムやカルシウム、ビタミンB6を豊富に含む食事で内側から身体をいたわり、グレープフルーツやペパーミントの香りで外側から心をサポートする。このようなインナー&アウターの両面からのケアが、つらい時期を乗り切るための鍵となります。
自分自身の身体の声に耳を傾け、食事と香りの力を上手に取り入れて、PMS期をもっと快適に過ごしましょう。
参考文献
1.Hale, A. C., et al. (2011). A serotonin-sensitive mechanism in the central nervous system control of food intake. The Journal of nutrition, 141(5), 893-897.
2.Asarian, L., & Geary, N. (2013). Sex differences in the physiology of eating. American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology, 305(11), R1215-R1267.
3.Fathizadeh, N., et al. (2010). Evaluating the effect of magnesium and magnesium plus vitamin B6 supplement on the severity of premenstrual syndrome. Iranian journal of nursing and midwifery research, 15(Suppl 1), 401.
4.Bertone-Johnson, E. R., et al. (2005). Calcium and vitamin D intake and risk of incident premenstrual syndrome. Archives of internal medicine, 165(11), 1246-1252.
5.Wyatt, K. M., et al. (1999). Efficacy of vitamin B-6 in the treatment of premenstrual syndrome: systematic review. BMJ, 318(7195), 1375-1381.
6.Shen, J., et al. (2005). Olfactory stimulation with grapefruit and lavender oils changes autonomic nerve activity and body weight. Chemical senses, 30(suppl_1), i248-i249.
